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第58巻 第1号

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症例報告
ベバシズマブ投与中に腹部大動脈仮性動脈瘤・十二指腸瘻を発症した再発子宮頸癌の1例
佐藤 はづき1), 黒瀬 喜子1), 重松 幸佑1), 魚谷 隆弘1), 赤堀 太一1), 長井 智則1), 高井 泰1), 關 博之2)
1)埼玉医科大学総合医療センター産婦人科
2)埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センター母体胎児部門
関東連合産科婦人科学会誌, 58(1):109-115, 2021

 ベバシズマブ(Bev)は血管内皮細胞増殖因子に対するモノクローナル抗体製剤で,腫瘍血管新生阻害作用により抗腫瘍効果を発現する分子標的薬である.今回,Bev投与中に腹部大動脈仮性動脈瘤を形成し,十二指腸への瘻孔を形成したと考えられる再発子宮頸癌の1例を経験したので報告する.
 症例は53歳,子宮頸癌FIGO stage IVB,cT3bN1MAと診断され,同時化学放射線療法を施行し完全奏功(CR)を得た.初回治療後5か月で再発し,パクリタキセル,カルボプラチン(TC)療法を6コース施行しCRとなったが,4か月後に再々発を確認した.イリノテカン単剤療法を施行したが奏功しなかった.そこで,子宮頸癌に対するBevの適応拡大を受け,TC+Bev療法に変更した.しかし,5コース目(治療11日目),急性の上腹部痛,黒色便を認め当院へ救急搬送となり,CTにて腹部大動脈仮性動脈瘤と十二指腸との瘻孔形成を確認した.直ちに,血管塞栓術,大動脈ステントグラフト内挿術を施行し,救命処置を行なったが,消化管出血は止血困難であり,第4病日に死亡に至った.
 分子標的薬は,従来の細胞障害性抗がん剤とは異なる毒性プロファイルを有するため,その作用メカニズムについて十分に理解して使用することが必要である.Bevの安全性や有害事象のマネジメント法は一般化されつつあるが,腹部,骨盤部への放射線治療歴,複数回の化学療法治療歴を有する患者への使用に際しては重篤な合併症の発現に注意することが重要である.

Key words:bevacizumab, cervical cancer, abdominal aortic pseudoaneurysm, duodenal fistula
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