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第58巻 第4号

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症例報告
経腟分娩後に産褥期卵巣静脈血栓性静脈炎を発症した1例
田中 舞, 上田 麗子, 柳 絢子, 長内 奈々, 牧野 睦子, 横澤 智美, 竹重 諒子, 仲真 潤子, 長谷川 哲哉, 石川 雅彦
大和市立病院
関東連合産科婦人科学会誌, 58(4):475-481, 2021

 妊娠や分娩によって深部静脈血栓症や肺塞栓症のリスクが高くなることが知られているが,産褥期卵巣静脈血栓症あるいは産褥期卵巣静脈血栓性静脈炎(POVT:Postpartum Ovarian Vein Thrombophlebitis)のリスクに関してはあまり知られていない.POVTは抗菌薬加療が奏功しない産褥期発熱の鑑別として重要であり,その診断と治療には注意が必要である.今回,我々は経腟分娩後に発症した卵巣静脈血栓性静脈炎の1例を経験したので若干の文献的検討を交えて報告する.症例は37歳,1妊0産,自然妊娠,合併症に網膜色素変性症,便秘症があった.妊娠経過に特記事項は認めず,妊娠40週1日に陣痛発来し,経腟分娩となった.産褥3日目に38℃の発熱を認め,細菌尿所見から尿路感染症として治療開始した.Spike状の発熱は持続し,産褥6日目に右下腹痛・右腰痛の出現を認めたため急性虫垂炎を疑って造影CTを施行したところ右卵巣静脈血栓性静脈炎の診断となった.産褥7日目に内服抗凝固療法,広域抗菌薬投与を開始し,産褥13日目に解熱した.産褥2か月時点での造影CTで血栓は消失しており,肺塞栓症や下肢深部静脈血栓症の合併は認めなかった.産褥期の右下腹痛をともなう発熱に対してPOVTを鑑別にあげることは重要であり,診断には造影CTや造影MRI検査が有用である.治療は抗凝固薬と抗菌薬の併用が推奨される.

Key words:Postpartum period, Thrombophlebitis, Anticoagulants, Anti-Bacterial Agents, Bacteremia
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