下垂体卒中は下垂体の出血,梗塞を呈する病態である.血圧変動や手術,凝固異常などに加えて妊娠が誘因となり,頭痛や眼症状のみのものから副腎クリーゼを発症し致命的となるものまである.今回意識障害,痙攣が出現し分娩後に下垂体卒中と診断した一例を経験したので報告する.症例は30歳,2妊1産(自然流産1回).既往歴に特記事項はなく,妊娠経過も妊娠糖尿病のため食事療法を行った以外は問題なく,概ね良好であった.妊娠40週1日自宅で意識消失しているところを発見され,前医へ救急搬送となった.前医に到着後,強直間代性痙攣を認めた.分娩後に著明な高血圧を認めたため,降圧薬を投与したところ,胎盤娩出後に血圧が低下し,心肺停止と判断され当院へ搬送となった.頭部単純CT検査にて下垂体卒中と診断した.妊婦が意識障害と痙攣発作を呈した場合,通常子癇発作や脳出血などを想定するが,下垂体卒中は時に致命的となるため,その可能性も考慮に入れる必要があると思われた.
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