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第58巻 第4号

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症例報告
術後に悪性ブレンナー腫瘍と診断された2例
山口 恵吾, 渡邉 百恵, 大沢 草宣, 澁谷 裕美, 西ケ谷 順子, 百村 麻衣, 松本 浩範, 小林 陽一
杏林大学医学部産婦人科教室
関東連合産科婦人科学会誌, 58(4):570-576, 2021

 卵巣ブレンナー腫瘍は全卵巣腫瘍の1~2%とまれな腫瘍である.組織学的に良性腫瘍が大半を占めるが,その2~5%は悪性腫瘍である1)2).今回我々は術後診断で悪性ブレンナー腫瘍と診断された2例を経験したので報告する.
 [症例]
 症例1は58歳,0妊0産,左下腹部痛を主訴に前医を受診し卵巣腫瘍の疑いで当科紹介となった.MRI検査でステンドグラスパターンを示す23 cm大の多房性囊胞性腫瘤を認め,境界悪性以上の粘液性腫瘍が疑われた.腫瘍マーカーは正常であった.卵巣癌疑いの診断で開腹手術を施行.術中迅速病理診断は腺癌,子宮全摘術+両側付属器摘出術+大網切除術施行.術後病理診断は悪性ブレンナー腫瘍,IA期(pT1aNXM0)であった.術後化学療法は施行せず1年3か月経過するが再発は認めていない.
 症例2は72歳,2妊2産,不正性器出血を主訴に前医を受診し,経腟超音波断層法にて充実成分を有する卵巣腫瘍を認め,卵巣癌疑いの診断で当科紹介となった.MRI検査において不整な壁肥厚や充実成分を有する13 cm大の多房性囊胞性腫瘤を認め,血液検査ではCA19-9 151.6 U/mlと高値を認めた.卵巣癌疑いの診断で開腹手術を施行し術中迅速病理診断で境界悪性以上のブレンナー腫瘍が疑われ,子宮全摘術+両側付属器摘出術+大網切除術+左内腸骨リンパ節生検+後腹膜生検を施行.術後病理診断は悪性ブレンナー腫瘍,術中被膜破綻を認めたため手術進行期分類は1C1期であった.術後化学療法を提示したが本人の希望なく,施行せず経過観察とした.
 悪性ブレンナー腫瘍は特異的な症状や画像所見に乏しく,術前診断は困難である場合が多いが,閉経後女性でMRI検査にてステンドグラスパターンを呈する多房性囊胞性腫瘤を認めた場合,悪性ブレンナー腫瘍も考慮する必要があると考えられた.

Key words:Ovary, Malignant Brenner tumor, Case report
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