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第58巻 第4号

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症例報告
妊娠28週に非瘢痕性子宮破裂を発症した多発性子宮筋腫合併妊娠の1例
浅野 史男, 松島 実穂, 片山 紗弥, 佐藤 泰紀, 植山 清香, 鳥海 玲奈, 田中 啓, 谷垣 伸治, 小林 陽一
杏林大学産科婦人科学教室
関東連合産科婦人科学会誌, 58(4):618-623, 2021

 子宮破裂は母体及び新生児死亡に直結する重篤な疾患である.今回我々は多発子宮筋腫合併妊娠の疼痛管理中に非瘢痕性子宮破裂を発症し,母児ともに救命しえた一例について報告する.症例は39歳初産婦.妊娠初期から子宮体下部に前壁8 cm,後壁6 cm,左側壁4 cmの筋層内筋腫を認めた.妊娠27週0日に腹痛を主訴に来院し筋腫変性痛の診断で緊急入院となった.アセトアミノフェン投与で経過をみていたが,妊娠27週6日から疼痛部位が右腹部や心窩部などにも移動し,鎮痛剤としてペンタゾシンを併用した.超音波断層法で子宮壁や筋腫に異常所見はなく,待機的にMRI検査を予定した.しかしMRI施行前の妊娠27週6日の夜間に心窩部痛の増強と胎児心拍数陣痛図で高度一過性徐脈を認め,緊急帝王切開術を施行した.術中所見で腹腔内に血液貯留と子宮底部左側の破裂を認め,子宮は修復し温存した.児は1,321 gの男児,Apgarスコア3点(1分),6点(5分)でNICU管理となった.母体は術後17日に,児は日齢76に後遺症なく退院した.本症例の疼痛の原因は切迫子宮破裂であり,非瘢痕性子宮破裂の発症要因として,子宮体下部に筋腫が集中し子宮下節の伸展が阻害されることで強い子宮筋張力が生じ,底部の筋層が過度に菲薄化したためと考えた.瘢痕性破裂のリスクを有さなくとも,改善の乏しい腹痛に対しては非瘢痕性子宮破裂を念頭に置いた対応をすべきである.

Key words:Spontaneous rupture of unscarred gravid uterus, Multiple uterine fibroids, Pregnancy with uterine fibroids
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