当院では妊娠初期検査で甲状腺ホルモン刺激ホルモン(TSH),遊離サイロキシン(FT4)に加え,甲状腺自己抗体である抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(抗TPO抗体),抗サイログロブリン抗体(抗Tg抗体)を測定している.当院で出産した妊婦1,211例のうち除外症例を除いた775例について,抗TPO抗体もしくは抗Tg抗体が陽性であった例をA群,陰性であった例をB群に分類し,母体背景,新生児予後について比較検討した.A群は122例(15.7%),B群は653例(84.3%)であった.母体背景の中で,甲状腺疾患の既往と家族歴については,A群で明らかに多かった.新生児予後については,A,B群間では有意差を認めなかった.妊娠初期検査でTSH,FT4が正常で,甲状腺自己抗体が陽性と初めて判明し,治療を開始した例は32例(4.1%)であった.妊娠初期のTSH,FT4が正常範囲であっても甲状腺自己抗体が陽性で治療を要する症例を認める.特に甲状腺疾患の既往歴,家族歴のある妊婦に対しては,妊娠初期検査で抗TPO抗体,抗Tg抗体を測定することは有用である可能性がある.
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