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第59巻 第1号

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症例報告
人工妊娠中絶後に卵巣静脈血栓症と肺動脈血栓塞栓症を発症した1例
井手 里紗1)2), 小原 久典2), 藤岡 磨里奈3), 品川 真奈花2), 山本 さやか2), 竹内 穂高2), 井田 耕一2), 山田 靖2), 宮本 強2), 増澤 秀幸4), 塩沢 丹里2)
1)社会医療法人財団慈泉会相澤病院産婦人科
2)信州大学医学部産科婦人科学教室
3)伊那中央病院産婦人科
4)医療法人さくら会ひろおかさくらレディースウィメンズクリニック
関東連合産科婦人科学会誌, 59(1):61-66, 2022

 卵巣静脈血栓症(OVT:ovarian vein thrombosis)では,約25%に肺血栓塞栓症(PTE:pulmonary thromboembolism)を合併し,その死亡率は約4%と高い.妊娠中のOVTの頻度は,全妊娠の0.05~0.18%と非常に稀で,そのなかでも人工妊娠中絶後にOVTを発症した報告は非常に少ない.今回,人工妊娠中絶後にOVTおよびPTEを発症した1例を経験したため報告する.
 症例は43歳の女性で,妊娠9週に人工妊娠中絶のために子宮内容除去術を受け,術後2日目に38度台の発熱と右下腹部痛を生じた.術後6日目の造影CT検査で右卵巣静脈血栓と両側肺動脈血栓が認められたために当院へ緊急搬送された.骨盤部MRI検査で子宮と両側卵巣に異常はなかったが,右卵巣静脈周囲に炎症像がみられた.右卵巣静脈血栓性静脈炎および両側PTEと診断し,抗凝固療法と抗菌薬の投与を開始した.その後,PTEの増悪はなかったが,炎症反応の改善は緩徐で長期間の抗菌薬の投与が必要であった.術後1.5か月で施行した造影CT検査では右卵巣静脈の血栓が残存していたために直接経口抗凝固薬を継続し,術後10か月に血栓の消失を確認し内服を終了した.
 人工妊娠中絶後に発熱や右下腹部痛を認めた場合には,稀ではあるがOVTを鑑別疾患に挙げ,D-dimerの測定や造影CT検査を考慮すべきと考えられた.

Key words:Ovarian vein thrombosis, pulmonary thromboembolism, induced abortion, dilation and curettage
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