卵巣硬化性間質性腫瘍は稀な良性の性索間質性腫瘍である.若年女性に好発するが,画像上は血流豊富な充実性腫瘍であるために悪性腫瘍との鑑別に苦慮し,付属器摘出術や開腹手術が行われた報告も多い.今回我々は術前に硬化性間質性腫瘍を疑い,腹腔鏡下に卵巣温存術式を行った1例を経験した.
症例は29歳で,0妊0産・既婚,特に既往歴はなかった.月経不順と不正性器出血を主訴に前医を受診し,左付属器に径5 cmの充実性腫瘍を認めたため当院を紹介された.MRI検査で腫瘍は分葉状を呈し,子宮筋層と比して非常に強い造影効果を認めたが,拡散強調像で高信号を認めなかった.腫瘍マーカーは基準範囲内であったが,月経2日目の血液検査ではエストラジオールとプロゲステロンが軽度高値であった.特徴的な症候と検査所見から硬化性間質性腫瘍を疑い,予期せぬ悪性腫瘍の可能性についても説明した上で,患者の強い卵巣温存希望を考慮して腹腔鏡下左卵巣腫瘍核出術を行った.腫瘍剝離面からの出血が多く,術中出血量は450 mlに達した.術後病理診断は硬化性間質性腫瘍で,術後に月経周期は正常化し,術後6か月の時点で再発の徴候を認めていない.
硬化性間質性腫瘍は特徴的な症候と検査所見から術前に疑うことも可能であり,若年に好発することから,十分な説明の上で腹腔鏡下腫瘍核出術も選択肢となり得る.血流豊富な腫瘍であるため,腫瘍核出における出血に注意が必要と考えられた.
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