今回,稀な閉経後の巨大筋腫を有する子宮捻転を経験した.症例は66歳,2妊1産.突然の下腹部痛を主訴に前医を受診した.単純CT検査で,下腹部に19 cm大の巨大腫瘤を認め,婦人科疾患を疑われ当院に搬送された.血液検査ではWBC 14,660 /μl,D-dimer 13.3 μg/mlと上昇,腫瘍マーカーではCEA 8.9 ng/mlと高値を認めた.造影CT検査で,骨盤内に境界明瞭な囊胞性腫瘤を認め,内部に出血を疑う所見を指摘され,卵巣捻転により組織が壊死し内腔に出血したか,もしくは卵巣悪性腫瘍の腫瘍内出血が考えられた.悪性の可能性があり,開腹手術の方針となった.術中所見は,子宮底部に巨大漿膜下筋腫があり,子宮峡部で頭側から見て時計回りに720度回転していた.筋腫は変性・出血を伴い,子宮峡部より上部と両側付属器は壊死しており,単純子宮全摘術と両側付属器摘出術を施行した.病理検査結果は,循環障害による顕著な変性・出血を伴った平滑筋腫だった.女性の急性腹症として子宮捻転は稀だが,妊娠時がほとんどであり,非妊娠時は極めて稀である.Cheongらによると,2018年まで50例未満しか報告されていない.診断には開腹手術を必要とすることが多く,臨床所見および画像所見のみで確定診断に至る症例は少ない.しかし,致死的になることもあり,子宮捻転リスクのある患者での急性腹症では,鑑別として念頭におく必要がある.
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