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第59巻 第4号

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症例報告
産褥期の妊娠高血圧症候群の精査で原発性アルドステロン症と診断された一例
五味 香織, 安部 加奈子, 柿沼 麗於奈, 坂場 大輔, 高尾 航, 加藤 敬, 道上 大雄, 高野 克己, 沖 明典
茨城県立中央病院産婦人科
関東連合産科婦人科学会誌, 59(4):475-480, 2022

 妊娠高血圧症候群(HDP;hypertensive disorders of pregnancy)の症例には二次性高血圧が一定数含まれる.妊娠中の血圧コントロールが不良のため精査され原発性アルドステロン症(PA;primary aldosteronism)の診断に至った報告が散見される.今回,妊娠中は正常血圧であったが産褥に血圧が急上昇しPAと診断された症例を報告する.
 症例は33歳,3妊2産.前児妊娠時には高血圧の指摘はなかった.来院時のみ軽度高血圧を認めたが自宅血圧は正常だった.妊娠40週0日に自然陣痛発来し経腟分娩に至り,児は3,212 gの女児,Apgar Scoreは1分値9点,5分値9点であった.分娩直後から重症域の高血圧を認め,降圧薬の服用を開始した.産褥37日にさらに血圧が上昇し降圧薬増量,産褥51日にはさらに増量したが降圧不良であり,産褥149日に循環器内科でカプトプリル負荷試験が施行されPAの診断に至り,内分泌内科でスピロノラクトンによる治療が開始された.
 PA合併妊娠では生理的血圧降下やプロゲステロンの作用で血圧が正常化してみえることがあるが,本症例のように妊娠中の血圧は正常で分娩後に血圧上昇をきたした症例は少数である.PA合併妊娠では,高血圧により周産期合併症が増加し,児の予後が不良になり得る.産褥期のみ血圧上昇する未診断のPA症例もあるため,降圧薬での治療抵抗性があるHDP症例では,二次性高血圧を疑い,早期に専門科へ繋げることが大切である.

Key words:Hypertension, Hyperaldosteronism, Primary Hyperaldosteronism, Pregnancy Complications
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