帝王切開瘢痕部妊娠(Cesarean scar pregnancy:以下CSP)は子宮破裂や大量出血をきたすため早期治療が必要である.手術は,帝王切開(Cesarean section:以下CS)による癒着で,膀胱剝離操作における膀胱損傷や瘢痕部の破綻による出血リスクを伴う.今回CSPに対し,膀胱内に二酸化炭素(Carbon dioxide:以下CO2)を注入する方法(気膀胱)を用いた子宮鏡併用下腹腔鏡瘢痕部妊娠根治術の一例を経験した.症例は39歳3妊2産(CS2回),妊娠7週に経腟超音波検査と骨盤部MRI画像からCSPと診断し,手術を施行した.腹腔鏡で膀胱の挙上とCS瘢痕部の埋没を確認した.気膀胱により膀胱の辺縁を確認し,膀胱剝離を行った.子宮体下部の筋層は菲薄し,一部膨隆しており,子宮鏡を併用しCS瘢痕部の妊卵を同定した.腹腔鏡下で瘢痕部筋層を切開し胎囊を摘出,菲薄化した筋層を切除し吸収糸で2層縫合後,切開部の減張目的に子宮円靭帯を縫縮した.術後4日目に退院,術後3か月のMRIで瘢痕部の修復を確認した.着床部の筋層が2.5 mmと非常に菲薄化した症例であったが,気膀胱を用いた膀胱剝離を行い,膀胱損傷や瘢痕部の破綻による出血を回避し,安全かつ確実に病巣除去できた.
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