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第60巻 第4号

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症例報告
術前にSCC抗原高値を呈し腫瘍内出血を伴った巨大卵巣成熟囊胞性奇形腫茎捻転の一例
黒岩 華子1)2), 紀 美和1), 濵田 友里3), 丹羽 ことみ4), 田村 和也2), 梅澤 聡2)
1)医療法人社団永生会南多摩病院婦人科
2)武蔵野赤十字病院産婦人科
3)聖隷浜松病院産科婦人科
4)両角レディースクリニック
関東連合産科婦人科学会誌, 60(4):489-495, 2023

 術前に血清SCC抗原高値を呈し腫瘍内出血を伴う巨大卵巣成熟囊胞性奇形腫の茎捻転を経験したため,文献的考察を踏まえて報告する.症例は46歳,0妊,脳性麻痺とてんかんの既往あり.数年前から腹部膨満を自覚するも放置.健康診断で便潜血反応陽性となり当院内科を受診し,腹部CT検査で巨大腹部腫瘍を認め当科紹介初診.診察で上腹部におよぶ巨大な無痛性腫瘍を触知,骨盤部MRI検査で30 cm大の腫瘍を認め,血清SCC抗原30.7 ng/ml,CA125 75.2 U/mlであった.全身状態良好であり,巨大卵巣腫瘍の診断で予定手術としたが,受診4日後に腹痛,悪心嘔吐が出現,受診7日後に右付属器切除術を施行した.開腹時,脂肪滴を含む5 Lの血性内容液を有する右卵巣腫瘍が360度捻転していた.病理組織診断は出血壊死を伴う右卵巣成熟囊胞性奇形腫であった.術後経過は概ね良好で,術後6日目に退院した.術後1か月時点で血清SCC抗原,CA125は正常化し,上部下部消化管内視鏡検査では異常所見を認めなかった.血清SCC抗原上昇を伴う成熟囊胞性奇形腫では,扁平上皮癌への悪性転化のみならず,合併症や体成分混入の有無,検査法によるSCC抗原偽高値の鑑別を要する.また,腫瘍内出血を伴う巨大な卵巣腫瘍において腫瘍内出血を疑う際は,茎捻転を想定し,速やかな対応を要する.

Key words:Mature cystic teratoma of the ovary, Giant ovarian tumor, Serum squamous cell carcinoma antigen
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