子宮頸部筋腫に対する腹腔鏡下子宮全摘出術（Total laparoscopic hysterectomy，TLH）は骨盤内の解剖学的な偏位により難易度が高い手術とされている．今回，大量出血を来した子宮頸部筋腫に対して偽閉経療法後にTLHを施行した一例を経験し，手術の適応・工夫について考察した．症例は47歳，4妊3産．大量の性器出血を認め救急受診，直径8 cm大の子宮頸部筋腫からの出血を認め，圧迫止血した．偽閉経療法後，子宮頸部筋腫は直径5 cm大に縮小し，本人の低侵襲手術希望によりTLHを施行した．子宮頸部筋腫のため子宮マニピュレーター挿入は困難であり，ヘガール頸管拡張器を子宮内腔に挿入して子宮を操作した．子宮上部靭帯・子宮動脈などを処理後に頸部筋腫が妨げとなり腟管の切開が困難であった．既に子宮への血流は減少していたため，経腟的に子宮筋腫核出術を先行し，腹腔鏡下に腟管を切開し，子宮を摘出した．子宮頸部筋腫に対してTLHを行った国内報告の34症例中，子宮マニピュレーターが入った症例は1例のみで，挿入困難な症例の10/15例が代替器具を挿入し子宮を挙上していた．TLHにおいて子宮筋腫の核出を先行した症例は腹腔鏡下13/17例であり，経腟での子宮筋腫核出の詳細な報告は存在しなかった．今回の症例では，子宮への血流を遮断した時点で経腟的に筋腫核出したことが，TLHを完遂するための要点であった．