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第60巻 第4号

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症例報告
慢性に進行したが児の転帰が不良であった母児間輸血症候群の一例
田部 洪輔, 林 優, 牧野田 佳, 義澤 航平, 岡宮 稜子, 坂本 奈緒子, 中嶋 理恵, 簡野 康平, 三塚 加奈子, 三上 幹男, 石本 人士
東海大学医学部専門診療学系産婦人科学領域
関東連合産科婦人科学会誌, 60(4):513-519, 2023

 母児間輸血症候群は胎児血が母体に流入し胎児貧血となり,胎児死亡を来しうる疾患である.症例は32歳,2妊1産,妊娠33週4日に胎動減少を訴えて前医を受診した.その際,ノンストレステストでサイナソイダルパターンを認めたため当院に母体搬送となった.来院時のノンストレステストでは基線細変動の減少,超音波検査では胎児中大脳動脈収縮期最大血流速度の高値(1.55 MoM相当)を認めた.バイオフィジカルプロファイルスコアは2点で胎児機能不全の診断で緊急帝王切開を施行した.児は男児で,体重は1,870 g,皮膚色は蒼白で,Apgarスコアは1分値0点,5分値3点,臍帯動脈血液ガスpH 7.005, Hb 3.2 g/dlであり,高度酸血症と著明な貧血を伴う重症新生児仮死であった.出生直後の児網状赤血球は129‰と上昇していた.帝王切開直後の母体血液検査ではα-フェトプロテイン27,205.7 ng/ml,ヘモグロビンF 11%と異常高値を認め母児間輸血症候群と診断した.胎盤病理診断では明らかな出血,血栓,梗塞を認めなかった.児は出生後の脳出血をきたし水頭症も併発したため,日齢60に治療目的に他院へ搬送となった.本例では予後良好例が多い慢性の進行が推察されたが児は重篤な経過を辿った.胎動減少の自覚を認めた場合は母児間輸血症候群を疑うこと,病態進行様式によらず児が重篤となる可能性を念頭に置く必要がある.

Key words:fetomaternal hemorrhage, fetal anemia
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