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第60巻 第4号

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症例報告
妊娠初期において悪性卵巣腫瘍を疑った片側発生の黄体化過剰反応(Hyperreactio Luteinalis)の一例
坂場 大輔, 安部 加奈子, 道上 大雄, 高階 沙英美, 五味 香織, 高尾 航, 加藤 敬, 高野 克己, 沖 明典
茨城県立中央病院産婦人科
関東連合産科婦人科学会誌, 60(4):551-558, 2023

 黄体化過剰反応は,妊娠や絨毛性疾患でhCGに反応し,原則として両側性に卵巣が腫大する良性疾患で,その形状から粘液性悪性腫瘍との鑑別に難渋することがある.我々は,妊娠初期に片側性に発症した黄体化過剰反応の1例を経験した.症例は23歳,月経困難症のため低用量エストロゲン・プロゲステロン製剤を内服していたが,服薬コンプライアンスは不良であった.下腹部痛で近医産婦人科を受診し,充実部位を伴う多囊胞性の左卵巣を認めたため,悪性腫瘍を疑い,MRI検査が実施された.その結果,子宮内に胎囊を認め,妊娠初期であることも判明したため,妊娠合併悪性腫瘍の診断で当院へ紹介となった.今回は挙児希望がなかったため,前医で妊娠中絶を行い,その後に再受診とした.しかし,妊娠中断後の所見では,左卵巣腫瘍を確認することができなかった.そのため,臨床経緯から左卵巣腫瘍は黄体化過剰反応であったと診断した.本症例が妊娠継続の場合には悪性卵巣腫瘍の疑いで外科的治療法を選択していた可能性が否定できない.つまり,過剰医療を回避するためにも,妊娠時に卵巣腫瘍を認めた場合は,片側発生であっても黄体化過剰反応を鑑別診断に挙げることが重要と言える.そのため,性急な判断に注意し,超音波検査によるspoke wheel signの有無,経時的な変化の確認,MRI検査によるADC値測定を実施し,多角的な視点から診断していくことが肝要である.

Key words:Hyperreactio Luteinalis, Ovarian cancer, Ovarian tumor, Pregnancy
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