卵巣癌の10%程度は40歳未満に発症するとされる.今回明細胞癌(IA期)ならびに粘液性癌G3(IC3期)に対して妊孕性温存手術を施行し,術後に挙児を得た2例を報告する.2症例共に強い挙児希望があり,厳重な説明と同意の下で妊孕性温存術を施行した.
症例1は36歳0妊.検診にて充実成分を伴う8 cm大の卵巣囊腫を指摘され,片側付属器摘出術を施行し,術中迅速病理診断にて明細胞癌疑いであった.腹腔内は他に明らかな病変を認めず,大網部分切除術を追加した.最終診断は明細胞癌(IA期)であった.後療法を提案したが化学療法による卵巣機能廃絶を懸念し希望しなかった.術後8か月で自然妊娠し順調に経過して妊娠37週1日で生児を得た.分娩後明らかな再発を認めていない.
症例2は26歳0妊.下腹部痛を主訴として充実性成分を伴う12 cm大の卵巣囊腫を指摘され,片側付属器摘出術を施行し術中迅速病理診断にて腺癌の疑いであった.腹腔内は他に明らかな病変を認めず,対側卵巣生検と大網部分切除術を施行した.最終診断は粘液性癌G3(IC3期)であった.術後化学療法を計6コース施行した.化学療法終了2か月で月経再開しその後5か月で自然妊娠し順調に経過し妊娠39週6日で生児を得た.分娩後明らかな再発を認めていない.
晩婚化により卵巣癌妊孕性温存術適応の境界症例は増加すると予想され,症例の集積が課題である.
〒102-0083
東京都千代田区麹町4-7
麹町パークサイドビル402
(株)MAコンベンションコンサルティング内
E-mail:kantorengo@jsog-k.jp