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第60巻 第4号

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症例報告
妊娠性肝内胆汁うっ滞症を反復した1例
辻中 安菜1)2), 布施谷 千穂1), 平林 瞭1), 吉池 奏人1), 荻山 めぐみ1), 品川 真奈花1), 田中 泰裕1), 浅香 亮一1), 小原 久典1), 菊地 範彦1), 塩沢 丹里1)
1)信州大学医学部産科婦人科学教室
2)飯田市立病院産婦人科
関東連合産科婦人科学会誌, 60(4):611-617, 2023

 妊娠性肝内胆汁うっ滞症(intrahepatic cholestasis of pregnancy;ICP)は,胆汁酸上昇による全身掻痒と肝逸脱酵素の上昇を特徴とし,子宮内胎児死亡や新生児呼吸障害と関連する疾患である.胆汁うっ滞の原因として,一般的には肝炎や胆石などが知られているが,ICPは原因不明であり,近年遺伝因子やホルモンの影響等が報告されている.今回2回目の妊娠でICPを反復した症例を経験したので報告する.
 症例は38歳で,第1子妊娠時は他院で管理されていた.妊娠38週に肝逸脱酵素が上昇したため当科に搬送された.妊娠35週頃より全身掻痒の自覚があり,入院時の総胆汁酸(total bile acid;TBA)は212 μmol/Lと高値であった.精査の結果ICPを疑い,妊娠39週0日に分娩誘発したが胎児機能不全のため帝王切開となった.第2子妊娠時は当科で管理していた.妊娠33週に全身掻痒を訴え,肝逸脱酵素とTBA(75 μmol/L)の上昇があり入院となった.第1子妊娠時の経過と精査の結果ICPと診断した.児のwell-beingを評価しつつ妊娠継続したが,妊娠34週2日に前期破水し,既往帝切のため帝王切開となった.いずれも分娩後にTBA値は正常化した.
 産褥期に腹部MRI検査を行ったが,特記すべき所見はなかった.妊娠によるホルモンの影響と増大した子宮の物理的圧迫が発症に関与したと考えられたが,遺伝的検索までは行っていない.
 妊娠経過中に全身掻痒と肝逸脱酵素の上昇がみられた場合には,ICPを念頭におき,妊娠週数やTBA値,児の状態を考慮して分娩時期を検討する必要があると考えられた.

Key words:Intrahepatic cholestasis of pregnancy, Total bile acid, Generalized pruritus, Ursodeoxycholic acid, Fetal distress
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