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第60巻 第4号

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症例報告
妊娠中に発症した縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫に対し緊急化学療法を施行し良好な予後を得た1例
金子 梨蘭1), 小林 千絵1), 谷川 珠美子1), 岡 愛子1), 野口 健朗1), 竹森 聖1), 戸田 友美1), 松島 実穂1), 田嶋 敦1), 谷垣 伸治1), 高山 信之2), 小林 陽一1)
1)杏林大学産科婦人科学教室
2)杏林大学血液内科学教室
関東連合産科婦人科学会誌, 60(4):639-645, 2023

 今回我々は,妊娠24週に気道狭窄症状にて発症したが,緊急化学療法により,母児ともに救命し得た縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫(primary mediastinal large B-cell lymphoma;PMLBL)の症例を経験した.症例は37歳,1妊0産,妊娠初期より咳嗽を認め,妊娠17週から喘鳴も出現した.妊娠24週0日に症状増悪したため近医受診し,単純胸部CT検査にて両側気管支を圧排する巨大縦隔腫瘍を認め,当院に緊急搬送された.同日,縦隔腫瘍からの針生検を施行し,迅速病理で悪性リンパ腫と診断されたため,母体救命目的で緊急CHOP療法を開始した.それによって呼吸状態は改善し,以後R-CHOP療法として計4コース施行した.経過中,胎児発育不全を認めたが,児のwellbeingは良好であった.母体の好中球回復と児の成熟を考慮し妊娠36週0日に選択的帝王切開術を施行した.児は1,980 g,Apgar score 8/8(1分値/5分値)であり,特記すべき形態異常は認められなかった.術後10日目からR-CHOP療法を再開し,更に2コースを追加した.治療終了後の造影胸腹部CT検査にて完全寛解が確認された.児は出生時よりBリンパ球が著減し生後1か月にはIgG低下がみられたが,生後8か月には正常化した.妊娠中は画像検査が敬遠される場合が多いため,重篤な症状の発症後に緊急治療を要するOncologic Emergenciesが生じることがある.各科との速やかな連携を図り,早期診断・治療することが母体の予後につながると思われる.

Key words:pregnancy, complicated, bymalignancy
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