骨髄異形成症候群(MDS)は,造血細胞の異常な増殖とアポトーシスを特徴とする血液腫瘍性疾患である.そのうち,悪性腫瘍に対する化学療法や放射線療法後に発症したものを治療関連MDS(t-MDS)という.アルキル化剤やトポイソメラーゼII阻害薬等の化学療法後や自己移植後に認められることが多く,治療後平均4~5年の経過で発症する.
今回卵巣癌初回化学療法後に発症したt-MDSを経験したので報告する.
症例は66歳女性,1妊1産.既往歴なし.62歳時に卵巣癌の診断で根治術を受け,病理組織診断は卵巣類内膜癌,G1,IC2期(FIGO 2014),pT1c2N0M0,腹水細胞診陰性であった.初回化学療法としてTC療法を6サイクル施行した.好中球減少を認めたため6サイクル目は3週間延期となったが,投与量を減量せずに施行した.その後は再発転移なく経過していたが,TC療法投与終了35か月後に血小板減少を主とした汎血球減少を認め,当院血液内科に精査を依頼した.骨髄病理組織診断で3系統血球の形態異常を認め,芽球2.3%,環状鉄芽球>15%であったためWHO分類における多血球系異形成と環状鉄芽球を伴う骨髄異形成症候群(MDS-RS-MLD)と診断した.化学療法投与後の発症であることから,t-MDSと診断し臍帯血移植の方針となった.
今日悪性腫瘍の治療成績向上に伴い長期生存者が増え,t-MDSも増加傾向にある.発症予測が困難な予後不良疾患であり,白血球分画検査を含めた長期にわたる経過観察が重要である.
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