羊膜索症候群（Amniotic Band Syndrome：ABS）は，羊膜破綻により形成された羊膜索が胎児に絡み付き，多彩な奇形を生じる病態である．今回胎動消失が主訴であり，診断と管理に難渋した1例を報告する．母は41歳2妊0産．今回自然妊娠．妊娠20週での経腹超音波検査で胎動を確認できていたが，妊娠21週で胎動自覚が消失したため来院し，胎児機能不全の疑いで入院した．入院後も胎動はほとんど観察されなかった．妊娠23週に胎児右足関節の内反と，右胸水の出現を認めた．その後妊娠25週に児頭と連続する羊膜様構造を羊水腔中に認めた．妊娠26週に陣発し，横位の適応で緊急帝王切開術を行った．出生体重675 g，Apgar Score 1点/1点/1点（1分/5分/10分），臍帯動脈血pH 7.389であった．児は喉頭閉鎖を認め，蘇生できず，生後55分に死亡した．外表所見として，頭部をほぼ一周する皮膚割線，両眼瞼の癒合，右第1趾の皮膚割線遠位の変色があり，また右足関節の内反を認めた．これらの所見からABSと診断した．胎動を認めず，羊水腔内に羊膜様構造物を認める場合，ABSも鑑別に挙げて対応する必要がある．