─原著─
腸管処置を伴う開腹消化器手術における電気メスの細菌学的汚染状況
亀田 典宏, 西尾 淳子, 小川 俊子, 岡田 忍 千葉大学大学院看護学研究科
背景:手術機器の細菌汚染は,手術部位感染のリスクを増大させることが示唆されている.さらに,手術全体を通して使用する機会が多い電気メスは,細菌を媒介する可能性が他の手術機器に比べて高いといえる. 方法:腸管処置を伴う消化器手術を対象に,手術に使用された電気メスより試料採取を行い,生化学的方法ならびに質量分析法にて菌種の同定を行った.対象手術は,結腸手術(COLO)と直腸手術(REC),胆道再建を伴う肝切除術(BILI-O)と膵頭十二指腸切除術(BILI-PD)とした. 結果:31例中30例にて細菌が検出され,147種類のコロニーを分離し,皮膚に由来するCNS 45(30.6%),S.aureus 6(4.1%),腸管に由来するEnterococcus spp. 20(13.6%),E. coli 5(3.4%)などの細菌を同定した.31例中4例で切開創SSIが発生し,電気メスから検出された細菌と切開創SSIの起因菌が一致していた症例は4例中3例であり,主な起因菌はE. faecalis,E. coliなどであった. 考察:電気メスは,皮膚のみならず腸管が由来であると推測される細菌によっても汚染されており,検出された細菌が切開創SSIの起因菌と一致している症例もみられた.本研究により,電気メスが細菌を媒介し,直接的または間接的に術野の汚染を引き起こす可能性が示唆された.
Key words:手術部位感染, 消化器手術, 手術機器, 細菌学的汚染
連絡先: e-mail:
norihiro0430@chiba-u.jp
受付日:2018年7月3日 受理日:2018年11月22日
34 (2):88─94,2019
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