─原著─
テストソイルとアデノシン三リン酸測定値によるフラッシャーディスインフェクターの洗浄評価
島 眞理1), 吉田 理香2), 大久保 憲2) 1)東京医科歯科大学医学部附属病院看護部, 2)東京医療保健大学/大学院医療保健学研究科感染制御学
医療施設で,汚染した尿器や便器(以下ベッドパン)などをそのまま洗浄し熱消毒する機器のひとつとして,フラッシャーディスインフェクター(Flasher Disinfector,以下FD)がある.FDは,欧州ではクラス1の医療機器に位置付けられ,国際標準規格(International Organization for Standardization,以下ISO)による洗浄評価方法が標準化されているが,日本では「医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律」で医療機器に規定されず,標準化された洗浄基準がない.排泄物を介した感染のリスクを低減するためには,排泄容器が確実に洗浄されたことを確認することが重要である. 今回,ISO15883-5で示されているテストソイルを作成し擬似汚染させた便器の洗浄後の目視評価と同時に,洗浄した便器のアデノシン三リン酸(ATP)測定を併用した臨床でのFDの洗浄評価方法を検討した.目視評価では,すべてのテストにおいてベッドパン内部のテストソイルは確実に除去されていた.ベッドパンの全表面にテストソイルを塗布した場合は,蓋やハンドル部分などにテストソイルの残留がみられたが,ベッドパンの内側にのみ塗布した場合は,テストソイルの残留はなかった.4段階の目視評価スケールとATP値は正の相関を示し,臨床でのFDの洗浄評価方法としてATP測定法は有用であることが示唆された.FDの適切な運用のためには,各施設で使用するベッドパンを使用し,テストソイルとATP測定を併用したFDの洗浄評価を実施することが推奨される.
Key words:フラッシャーディスインフェクター, ベッドパンウォッシャー, 洗浄評価, アデノシン三リン酸(ATP)
連絡先: e-mail:
m-shima.mnrs@tmd.ac.jp
/ mari@suite.plala.or.jp
受付日:2018年8月10日 受理日:2019年2月19日
34 (3):147─154,2019
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