─総説─
病院におけるWater Hygiene管理
中村 造 東京医科大学病院感染制御部・感染症科
世界的に医療施設内におけるWater hygiene水質衛生の重要性が指摘されてきているが,本邦ではまだその認識が低い.医療施設の水由来の院内感染事例は,数多く報告されている.原因となる設備や機器は,蛇口や蛇口から出る水だけでなく,施設内の配管全て,貯水・貯湯槽,シンク,シンク下方の自動温度調整器具など幅広く,また人工心肺,人工呼吸器,ネブライザーなどのリスクも指摘されている.病原体もレジオネラ,非結核性抗酸菌,腸内細菌科細菌,ウイルスなど多様である.本邦では水道水に対し,塩素を主とする消毒が用いられているが,その他の消毒薬を使用する国や,化学的消毒自体を用いない国もある.現時点では,使用頻度を保ちフラッシングを継続すること,温度管理(全配管で25度以下,45度以上)を行うこと,適正な塩素濃度を保つことが,本邦で現実可能な対策である.跳ね返りの少ないシンクの形状,排水口からの逆流が少ない排水口の検討など,取り組むべき策は多い.また,自動水栓は水道関連病原体に対して不十分な温度管理となりやすく,また十分なフラッシング時間が保てないという問題点があり,本邦におけるWater Hygieneの大きなリスクになっている可能性がある.諸外国からのガイドラインだけでなく,本邦における現実可能な対策を検討していく必要がある.
Key words:Water Hygiene, 塩素消毒, 温度管理, フラッシング, 自動水栓
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受付日:2019年6月25日 受理日:2019年8月5日
34 (6):271─276,2019
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