─原著─
アミカシン投与時における腎機能障害の発生割合と血中トラフ濃度に関する回帰分析
松木 祥彦1), 佐古 兼一2), 矢嶋 美樹3), 松田 佳和2), 渡部 多真紀4)5), 渡辺 茂和6) 1)上尾中央医科グループ柏厚生総合病院薬剤科, 2)日本薬科大学臨床薬学部門, 3)船橋総合病院薬剤科, 4)帝京大学薬学部病院薬学, 5)帝京大学医学部附属病院薬剤部, 6)帝京大学薬学部薬学実習推進研究センター
アミノグリコシド系抗菌薬のアミカシン硫酸塩(amikacin sulfate:AMK)は,抗菌活性を最大限に引き出すために最高血中濃度(ピーク値)を一定以上に保つ必要があるが,腎機能が低下した患者では腎機能障害の発生割合と相関する最低血中濃度(トラフ値)が上昇するため注意が必要である.投与間隔の調整によって最適な投与法を選択できない症例では,腎機能障害の発生頻度を抑える方策に関して議論の余地が残されている.本研究の目的は腎機能障害との因果関係が強いトラフ値と腎機能障害発生割合との関係性について解析を行い,AMK適正使用の指針を提示することである.対象は,細菌性肺炎,尿路感染症等の治療を目的としてAMK投与を受けた患者のうち235例のデータを使用した.閾値となるトラフ値の候補はCART分析より2.55 μg/mL及び6.85 μg/mLとなった.抗菌薬TDMガイドラインが基準値として定める4.0 μg/mLと合わせ3値をロジスティック回帰分析により得られた回帰曲線にあてはめた.その結果,腎機能障害発生割合の平均値(95%信頼区間)はそれぞれ2.7%(1.2-5.9),3.6%(1.8-7.1),6.0%(3.3-10.8)であった.AMKを検討する際に問題となるトラフ値に関して,一律のカットオフ値でなく腎機能障害発生割合との兼ね合いから患者状況に応じて柔軟な判断ができるものと考えられた.
Key words:アミカシン硫酸塩, TDM, 腎機能障害
連絡先: e-mail:
cds306@crest.ocn.ne.jp
受付日:2019年5月22日 受理日:2019年10月8日
35 (1):22─30,2020
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