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Article in Japanese

─報告─

院内感染で判明したレジオネラ菌による給湯系汚染とその後の対応

磯目 賢一, 中島 佳代, 池町 真実, 山崎 貴之, 中浴 伸二, 宮川 一也, 永澤 浩志
神戸市立西神戸医療センター感染対策室


当院は築25年,地下1階,地上10階の鉄骨鉄筋コンクリート造で病床数475床の地域中核病院である.Evans症候群のためプレドニゾロン45 mg/日にて入院加療中の70歳代女性が本剤投与開始9日目に発熱した.胸部X線写真上の浸潤影に加え尿中レジオネラ抗原検査が陽性となりレジオネラ肺炎と診断された.院内感染を疑い給水・給湯系の調査をしたところ,5~10階の病棟給水栓全てからLegionella pneumophila serogroup 1が検出され,患者喀痰から検出された菌の遺伝子型も一致した.院内感染事例として全ての給水栓で熱湯フラッシング,シャワーホースの消毒・交換,病棟のケア制限などを行った.フラッシング後に任意の82か所で培養施行したところ,分岐された配管に気付いてなかった1か所で持続的に菌が検出された.溜まり水となっていた配管を通るようにフラッシングを行ったところ陰性を確認できた.また転院・退院患者の追跡調査,病院職員の健康調査なども行ったが当該患者以外で新規患者を認めなかった.しかしその後の定期検査では使用頻度が少ない給水栓で再度レジオネラ菌が検出され,バイオフィルム形成による菌の残存によるものと考えられた.フラッシングで陰性化を確認した後もレジオネラ菌が一度検出された限りは配管内でのバイオフィルム形成を念頭においた長期的な対応が必要であり,この経験をもとに当院の対応マニュアルを作成した.

Key words:レジオネラ菌, 院内感染, 給湯, バイオフィルム

連絡先:
e-mail: ken-ime@mail.goo.ne.jp

受付日:2019年10月10日
受理日:2020年1月6日

35 (2):81─86,2020

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