─報告─
東北6県における皮膚粘膜曝露に関する現状
佐藤 智子1), 村井 貞子2) 1)秋田大学医学部附属病院集中治療部, 2)東邦大学
東北6県にある466病院(精神科専門病院を除く)の感染管理担当者を対象に,針刺し・切創,皮膚・粘膜曝露の状況と曝露予防及び発症予防の現状を明らかにする目的で郵送法による質問紙調査を行い,病床数の記載された252病院(有効回収率54.1%)で,300床以下と301床以上の病院の回答を比較検討した.針刺し・切創の発生率は,年間100稼働病床当たり2.7(95%CI 2.4-3.1)であり,中小規模病院での発生率はエイズ拠点病院である大規模病院に比較して少ないが発生があることを確認した.また,予防策としての「安全機能付き器材の導入」「入職時のB型肝炎ワクチン接種」については,300床以下の病院の実施率が低く(p=0.018,p=0.003),理由として経費の問題が挙げられていた.更に「曝露後の予防投薬システムがある」病院も,300床以下で少なかった(p=0.030).東北6県の中小規模病院での曝露の発生率は大規模病院に比較して低かったが,その対策については大規模病院と比較して不十分な実態が明らかとなった.これらの病院が日本の病院の82%を占めることから,実際にリスクを負う医療従事者数は多いと推測され,感染予防策の整備が急務であると考えられた.
Key words:針刺し・切創, 皮膚・粘膜曝露, 感染予防, 中小規模病院
連絡先: e-mail:
t.sato@hos.akita-u.ac.jp
受付日:2016年9月29日 受理日:2017年7月13日
32 (5):275─281,2017
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