─報告─
長期的抗菌薬適正使用策による多剤耐性緑膿菌減少効果
野口 周作1)2), 吉田 奈央1), 先﨑 貴洋1), 森角 裕貴1), 上野 ひろむ2)4), 望月 徹2)3) 1)日本医科大学武蔵小杉病院薬剤部, 2)同 感染制御部, 3)同 救命救急センター, 4)同 看護部
病院の感染制御において,薬剤耐性菌対策は重要な問題である.当院では2004年8月にInfection Control Team(以下,ICT)が発足して以来,抗菌薬適正使用策を行い15年が経過した.長期的取り組みと多剤耐性菌減少効果について検討し,若干の知見を得た.オーダリングシステムと連動した特定抗菌薬使用届出制導入,Antimicrobial Stewardship(以下,AS)活動としてICT抗菌薬ラウンドを開始した.また,血液培養陽性患者ラウンドや周術期抗菌薬使用ガイド等の整備を行った.さらに2018年AS Teamを発足し,適正使用策を強化した.カルバペネム系抗菌薬のAntimicrobial Use Densityは,2.20(2004年)から0.61(2017年)に,平均投与日数は8.40日(2006年)から5.89日(2010年)に減少し,緑膿菌のメロペネムに対する感性率は71.6%(2008年)から97.1%(2018年)に回復した.多剤耐性緑膿菌(以下,MDRP)は28件(2008年)から0件(2018年),2剤耐性緑膿菌は10件(2010年)から0件に減少した.特にMDRPは2019年10月現在29か月検出されていない.長期にわたり継続した対策や啓発で,安定した耐性菌対策ができていると考える.
Key words:抗菌薬適正使用, カルバペネム系抗菌薬, ICT, AST, MDRP
連絡先: e-mail:
shusaku@nms.ac.jp
受付日:2019年12月11日 受理日:2020年3月27日
35 (3):104─109,2020
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