─報告─
擦式アルコール手指消毒薬の使用率向上による細菌分離率の低下
村田 明子1)2), 川嶋 郁2), 畠山 英司1)2), 山﨑 彩華1)2), 松本 勝城1)2), 深沢 貴志1)2), 松本 菜月2), 神谷 あかね2), 藤田 浩之2) 1)済生会横浜市南部病院薬剤部, 2)同 感染制御チーム
擦式アルコール手指消毒薬の消費量が医療関連感染との関連性が深いメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA),Serratia marcescens,基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生大腸菌の検出率と関連がみられるかを後方視的に検討した.擦式アルコール手指消毒薬使用量を増加させるために,2014年より病棟ラウンドで個々の看護師に対して手指衛生の手法に関する直接指導を行い,院内感染防止をテーマとして勉強会を実施した.その結果,手指消毒薬使用率(L/1,000patient-days)は取り組み前後において,一般病棟では4.42から11.0,クリティカル部門では19.5から65.3と増加した.MRSA分離率(分離数/1,000patient-days)は,一般病棟では0.58から0.35(p<0.05),クリティカル部門では4.57から3.40へ減少した.Serratia marcescens分離率は,一般病棟では0.08から0.06,クリティカル部門では1.37から0.13(p<0.05)へ減少した.ESBL産生大腸菌分離率は一般病棟では0.17から0.13,クリティカル部門では0.46から0.38へ減少した. これらの細菌分離率を低く抑えるために,看護師への教育を引き続き続けるとともに,すべての職種に対して手指消毒薬の消費を促したいと考えている.
Key words:手指消毒, 擦式アルコール手指消毒薬, MRSA, 細菌分離率
連絡先: e-mail:
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受付日:2019年10月6日 受理日:2020年4月27日
35 (4):163─167,2020
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