─報告─
鹿児島県医師会災害医療チームによる2016年熊本地震における避難所感染対策支援活動
川村 英樹1)2), 徳田 浩一1)2), 川上 雅之2), 有村 敏明2), 川口 辰哉3), 松井 珠乃4), 西 順一郎1)2) 1)鹿児島大学病院医療環境安全部感染制御部門, 2)鹿児島感染制御ネットワーク, 3)熊本大学医学部附属病院感染免疫診療部, 4)国立感染症研究所感染症疫学センター第一室
鹿児島県JMAT(日本医師会災害医療チーム)では宇土市で感染対策チームを構成し,4月21日(本震5日後)~5月1日に被災地医師会と自治体保健活動との協働で避難所感染対策支援活動を行った.今回の研究の目的は避難所感染対策を検証し,有効性を検証することである.各避難所で把握された発熱者,呼吸器・消化器の有症者数を調査票に記録し症候群サーベイランスを実施した.期間中14の指定避難所で40名の呼吸器・8名の消化器の有症状者がみられたが,インフルエンザ・ノロウイルス感染症は除外された.設備・感染対策物品・衛生環境・隔離スペース等を巡回時に確認し,リスクアセスメントを行ったが,次亜塩素酸ナトリウムが不足し,トイレ清掃や吐物処理物品の準備が不十分であった.次亜塩素酸ナトリウム等の必要物品配布やトイレ清掃・吐物処理方法の指導,感染症発症例への対応も併せて実施した.アウトブレイクの発生はなく,リスクアセスメントと症候群サーベイランスを活用した避難所感染対策支援活動は感染拡大防止に有用と思われた.一方,情報収集や活動内容に他の医療支援チームや保健師活動と重複するものもあり,情報共有が可能なスキームの確立が望まれる.
Key words:2016年熊本地震, 災害支援, インフルエンザ, 感染性胃腸炎
連絡先: e-mail:
hidekik@m2.kufm.kagoshima-u.ac.jp
受付日:2017年4月17日 受理日:2017年7月6日
32 (5):282─290,2017
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