─原著─
Geriatric Nutritional Risk Indexを指標としたバンコマイシンによる腎機能障害発現割合と血中トラフ濃度の比較検討
松木 祥彦1), 松本 遥奈2), 佐古 兼一2), 矢嶋 美樹3), 渡部 多真紀4)5), 渡辺 茂和6) 1)上尾中央医科グループ柏厚生総合病院薬剤科, 2)日本薬科大学実務薬学分野, 3)船橋総合病院薬剤科, 4)帝京大学薬学部病院薬学, 5)帝京大学医学部附属病院薬剤部, 6)帝京大学薬学部薬学実習推進研究センター
重症感染症では,低蛋白血症や低アルブミン血症を合併していることが多く感染症治療を難治化させる要因とされている.GNRIは,%IBWとAlbを用いた高齢者の栄養評価法で,重症化を判断する指標として有用性が示されているが,VCMによる腎機能障害との関係性については明らかとなっていない.本研究は,GNRIとVCMによる腎機能障害発現割合との関係性について調査し,目標トラフ域設定の個別化にGNRIを活用する方法論を検討した.対象は,VCMの投与を受けた293例とした.解析方法は,腎機能障害非発現群/発現群を分けるGNRI閾値をCART分析,ROC曲線により探索した.得られた閾値を使用しHigh GNRI群とLow GNRI群の2群に分け,トラフ値<20 μg/mL群,20~25 μg/mL群,≧25 μg/mL群で生存時間解析を行った.High GNRI≧68群(163例)は,トラフ値<20群と20~25群では腎機能障害発現率に有意差はなかった(p=0.66).Low GNRI<68群(130例)では,トラフ値20~25群は,トラフ値<20群と比較して腎機能障害発現率は高かった(p<0.01).Low GNRI群は,安全性の面からトラフ値>20 μg/mLは推奨できないというガイドラインの結果と一致したが,High GNRI群ではトラフ値の上限を25 μg/mLまで許容できる可能性が示唆された.
Key words:バンコマイシン塩酸塩, Geriatric Nutritional Risk Index, therapeutic drug monitoring, 腎機能障害
連絡先: e-mail:
cds306@crest.ocn.ne.jp
受付日:2020年5月9日 受理日:2020年7月27日
35 (6):223─232,2020
|