─原著─
緑膿菌耐性率に関連するカルバペネム系抗菌薬の使用評価指標の単施設後方視的調査研究
三好 由希子1), 高根 浩1)2), 森下 奨太2)3), 岡田 健作2)4), 北浦 剛4), 千酌 浩樹2)4) 1)鳥取大学医学部附属病院薬剤部, 2)同 感染制御部, 3)同 検査部, 4)同 感染症内科
抗菌薬使用量調査は薬剤耐性菌の発生や拡大の予兆把握に重要であり,antimicrobial use density(AUD)やdays of therapy(DOT)の指標が使用される.我々は上記指標に加え,入院患者に対する投与患者率(n/1,000 admission)と1日用量の指標とされるAUD/DOT比に着目し,当院の2009年から2017年のカルバペネム系抗菌薬の使用評価指標と緑膿菌のイミペネム/シラスタチン(IPM/CS)およびメロペネム(MEPM)耐性率の関係を評価した.単変量解析にて緑膿菌耐性率と有意な相関を示したIPM/CS+パニペネム/ベタミプロン(PAPM/BP)+ビアペネム(BIPM)群とMEPM+ドリペネム(DRPM)群のAUD/DOT比,IPM/CS+PAPM/BP+BIPM群の投与患者率について重回帰分析を行った結果,MEPM+DRPM群のAUD/DOT比で有意差(IPM/CS耐性率:β = -0.818,P = 0.007;MEPM耐性率:β = -0.796,P = 0.010)が認められた.また,シグモイド型用量反応モデル解析にて最大耐性率の1/10に相当するMEPM+DRPM群のAUD/DOT比は0.938と算出された.以上から,カルバペネム系抗菌薬のAUD/DOT比は1日用量の実態だけでなく,緑膿菌耐性率に関連する指標である可能性が示唆された.
Key words:サーベイランス, カルバペネム系抗菌薬, antimicrobial use density, days of therapy, 薬剤耐性
連絡先: e-mail:
yukicomb@tottori-u.ac.jp
受付日:2020年3月5日 受理日:2020年8月3日
35 (6):233─240,2020
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