─原著─
病院併設型保育所に通所する園児の感染症を予防するための衛生的介入効果の検討
土田 陽子, 落合 亮太, 徳永 友里, 深瀬 史江, 渡部 節子 横浜市立大学大学院医学研究科看護学専攻感染看護学分野
病院併設型の保育所(以下,院内保育所)では,保育所を利用する医療従事者が媒介となり,通所する園児と患者の間で感染症が伝播することが懸念される.本研究では,院内保育所に通所する園児と保育士へ衛生的介入を実施し,その効果を検討した. 院内保育所に通所する園児と保育士を対象に,手指衛生と咳エチケット教育,環境清掃の強化等からなる衛生的介入を実施した.介入前後の園児と保育士の手指衛生遵守率,および園児の感染症罹患率と感染による欠席割合を比較した. 対象者は,園児29名(同意取得率100%)と保育士22名(同意取得率92%)であった.園児の手指衛生遵守率は,介入前78.2%から介入後97.4%と有意に向上した(p<0.001).保育士の手指衛生遵守率は,介入前37.6%から介入後78.2%と有意に向上した(p<0.001).一方,園児の感染症罹患率は介入前11.47/1,000人日,介入後11.31/1,000人日で,相対危険とその95%信頼区間は0.99(0.53-1.83)であった.感染症での欠席割合は,介入前2.17%,介入後2.75%で,相対危険とその95%信頼区間は1.26(0.24-6.68)であった. 本研究で実施した院内保育所における衛生的介入は,園児と保育士の手指衛生遵守率を改善させたが,園児の感染症罹患率と欠席割合は変化させなかった.
Key words:院内保育所(用語集該当なし), 保育士(用語集該当なし), 幼児(用語集該当なし), 手指衛生
連絡先: e-mail:
t176616g@yokohama-cu.ac.jp
受付日:2020年4月14日 受理日:2020年9月25日
36 (1):28─34,2021
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