─原著─
腸内細菌科細菌血流感染症患者における臨床転帰予測因子としての血液培養陽性化時間の解析
髙橋 弘泰1), 高嶋 祥匡1), 藤本 佐希子2), 渡邉 一正2)3), 奥村 明彦3) 1)愛知県厚生農業協同組合連合会海南病院薬剤部, 2)同 感染制御部, 3)同 消化器内科
血液培養陽性化時間(time to positivity:TTP)は臨床転帰と関連する因子と考えられている.本研究では,腸内細菌科細菌血流感染症患者における予後因子を明確にするため,TTPと臨床転帰との関連性を調査した.当院の1年間で腸内細菌科細菌血流感染症と診断された245例を調査対象とし,TTPやその他の臨床指標を解析した.TTPの最適カットオフ値はROC曲線にて11時間と算出された(感度91.7%;特異度68.7%;曲線下面積0.841).さらに14日以内の死亡に関連する因子をコックス比例ハザード回帰モデルで解析した.その結果,TTP ≤11時間(ハザード比19.6;p=0.006)とPitt bacteremia score(PBS)≥4点(ハザード比14.6;p<0.001)の2項目が有意な独立予後不良因子と示された.この2項目を用い,PS(prognostic score)を算出した.2項目とも該当しない事例をPS 0,1つが該当する事例をPS 1,2項目とも該当する事例をPS 2とした.14日生存率はPS 0(n=155)で99.4%,PS 1(n=81)で93.8%,PS 2(n=9)で33.3%であった.PSが高いほど14日生存率は不良であった.これらの解析から,TTPとPBSを組み合わせたPSは,予後推定に有用であると考えられた.
Key words:血液培養陽性化時間, Pitt bacteremia score, 予後因子
連絡先: e-mail:
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受付日:2021年10月15日 受理日:2021年12月29日
37 (2):48─56,2022
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