─報告─
小児医療施設従事者における百日咳事例と三種混合ワクチン接種の現状
吉田 美智子1), 庄司 健介1), 菅原 美絵2), 宮入 烈1), 日本小児総合医療施設協議会小児感染管理ネットワーク(PICoNET) 1)国立成育医療研究センター生体防御系内科部感染症科, 2)同 看護部
近年,本邦では百日咳症例において青年層・成人の割合が増加し,感染時に重症化する可能性がある新生児や乳児への伝播が懸念される.青年層・成人に対する百日咳含有ワクチンの追加接種の必要性から,本邦では2018年に沈降精製百日せきジフテリア破傷風混合ワクワクチン(DPTワクチン)が再販売された.百日咳の院内感染対策として,一部の医療施設では職員へのDPTワクチン接種が行われているが,小児医療施設における実施状況は不明である.そこで,百日咳の院内感染管理上の問題の有無と,職員に対するDPTワクチン接種状況についてアンケートを行った.日本小児総合医療施設協議会に登録されている36施設を対象とし,35施設から回答を得た.調査の結果,小児医療施設の37%(17/35)が職員の百日咳罹患事例を経験しており,多数の職員に対し曝露後,予防抗菌薬投与を行った施設もあった.しかし職員に対するDPTワクチン接種を行っていたのは17%(6/35)の施設のみであり,接種対象者は施設ごとに様々であった.高リスク患者が存在する小児医療施設における医療従事者へのDPTワクチン接種は,百日咳の院内感染対策において寄与することが期待される.接種対象者の設定など,さらなる検討が必要である.
Key words:百日咳, DPTワクチン, 小児医療施設, 医療従事者
連絡先: e-mail:
miyairi@hama-med.ac.jp
受付日:2021年8月17日 受理日:2022年1月13日
37 (3):90─94,2022
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