─原著─
画像データを利用した蛍光マーカーの定量的ふき取り評価方法の検討
黒図 肇1)2), 菅原 えりさ2), 佐伯 康弘2), 梶浦 工2), 木村 哲2) 1)株式会社リジョイスカンパニー, 2)東京医療保健大学大学院医療保健学研究科感染制御学領域
医療環境の清掃を評価する方法の一つである蛍光マーカー法は安価で簡便でリアルタイムに清掃状態を可視化できるが評価は定性的で微生物除去との関連性も十分検討されていない.そこで今回写真画像に着目し蛍光マーカー(Fm)を撮影した画像のピクセル値(PX)を用いた定量法の構築と微生物(Bc)除去率との関連性を検討した.まず「ピクセル上のFm量の増加に従いPX値は最大PX値(255)に対して指数関数的に漸近する」との仮説式により総Fm量(Xt)を算出した.次に市販のFmの希釈液の一定量を塩化ビニール黒,白,ステンレス(S)の3種の基板に塗布しデジタルカメラで撮影してその各画像のPXからXtを算出し実塗布量との相関係数Rから仮説式を検証した.Bc除去率にはStaphylococcus aureusを使用した.白,Sの各板上にBcおよびFmを隣接塗布し含水ワイプで一方向にふき取りその後のFmとBcの各除去率を算出した.結果,仮説式に基づき算出したXtと実塗布量は良好な相関性(黒,白,S板上での相関係数は各々0.99,0.99,0.99)を示した.また白,S板上のBc,Fmの各除去率の決定係数は各々0.46,0.61であった.一方Fm除去率90%以上に限ればBc除去率との一致性は良好な傾向を示した.これらよりFm量を画像データから定量化することは可能であることが検証された.
Key words:清掃評価, 蛍光マーカー法, 定量評価, 画像データ, ピクセル値
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受付日:2022年4月13日 受理日:2022年5月31日
37 (5):174─182,2022
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