─報告─
新型コロナウイルス流行期の中等症対応病院におけるHigh Flow Nasal Cannula(HFNC)使用の経験
坂野 勇太1), 林 三千雄2), 大野 博子2), 幸福 知己2), 中井 依砂子2), 楠原 瑞貴2), 角谷 龍哉2), 坂本 悦子2), 藤原 広子2), 重松 三知夫1) 1)住友病院呼吸器内科, 2)同 感染制御部
本邦では新型コロナウイルス流行期において人工呼吸管理が可能な重症病床が逼迫した.中等症患者を受け入れている当院では,重症病床への転送を減らすために新型コロナウイルス肺炎に対しHigh Flow Nasal Cannula(HFNC)を使用した.今回,我々はHFNC使用による転帰および影響を及ぼす因子,挿管回避の効果を後方視的に検討した.HFNCはシンプルマスク5 L/minの酸素投与下で酸素化が保たれない場合に装着し,FiO2:60%~70%で酸素化が保たれない場合に気管挿管を行った.HFNCは陰圧個室またはグリーンゾーンから距離のある病室で使用し,職員は一般的な新型コロナウイルス診療に必要な接触・飛沫予防策に加えて,空気感染予防策を行った.研究期間中にHFNCを装着した患者のうち34人が,呼吸不全が進行した際の気管挿管を希望した.そのうち20人(58.8%)がHFNC使用のみで軽快し,14人(41.2%)が気管挿管に至った.パンデミック初期の挿管基準と比べ,のべ151(人・日)の人工呼吸器使用日数を削減した.対応した職員にHFNC使用に関連した感染者はいなかった.適切な感染対策下においてHFNCは新型コロナウイルス肺炎に対し院内感染を発生させることなく使用でき,患者の気管挿管への移行を抑制し,重症病床逼迫を緩和する一助となる可能性がある.
Key words:COVID-19, HFNC, 環境換気, 感染対策, 医療逼迫
連絡先: e-mail:
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受付日:2022年6月27日 受理日:2022年10月20日
38 (2):68─74,2023
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