─報告─
当院におけるカルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌によるアウトブレイクに関する分子生物学的疫学的検討ならびに環境調査報告
大塚 健悟, 宮尾 直樹 日本鋼管病院呼吸器内科
当院において,2019年9月から11月にかけてカルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌(Carbapenemase-Producing Enterobacterales:CPE)によるアウトブレイクが発生した.同一病棟より計4名の患者からCPEが検出された.当該患者のうち3名は同室の期間があり,他1名は隣室であった.当該病棟患者の保菌調査ならびに病棟内のシンク,洗面台等の水回り箇所を中心に計163箇所の環境調査を施行した.新たに他患者よりCPEの検出はなかったものの,シンクおよび吸引器周囲を中心に計13箇所からCPEが分離された.パルスフィールドゲル電気泳動法,ポリメラーゼ連鎖反応法を用いた分子生物学的疫学的検討を施行した結果,同室であった患者3名のCPEはIMP-19型,患者1名ならびに環境培養からのCPEはIMP-1型であることが判明した.患者は,ほぼ全介助の日常生活動作であったことより,スタッフによる水平伝播の可能性が考えられた.標準予防策,環境清掃の徹底ならびに環境除菌を施行しアウトブレイクは終息した.およそ1年後に,環境調査を再度施行した.調査の結果,CPEの検出は器具洗浄シンクの1箇所のみにとどまった. 環境除菌に加え手指衛生の強化ならびに水回り箇所の清掃の徹底が再発防止に重要であると考えられた.
Key words:カルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌, アウトブレイク, パルスフィールドゲル電気泳動法, ポリメラーゼ連鎖反応法, 環境除菌
連絡先: e-mail:
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受付日:2022年5月12日 受理日:2023年2月8日
38 (3):132─137,2023
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