─報告─
亜塩素酸水製剤の病院環境整備剤としての安全性と有効性の検討
野上 由起子1), 松田 知子1), 長尾 多美子2), 島 治伸3), 山岡 徹4), 合田 学剛4), 桑原 知巳5) 1)徳島健康生活協同組合徳島健生病院感染対策委員会, 2)四国大学看護学部, 3)徳島文理大学人間生活学部心理学科, 4)本部三慶株式会社, 5)香川大学医学部分子微生物学
近年,亜塩素酸水が食品添加物殺菌料として認可され,環境除菌剤としても市販されている.本製剤は塩素系薬剤であるが,刺激性が少なく,有機物存在下でも比較的安定とされている.本研究では亜塩素酸水製剤の病院環境整備剤としての安全性と有効性を検証した.スタッフへの安全面や利便性はアンケート調査により評価した.亜塩素酸水製剤導入前に使用していた薬剤(第四級アンモニウム塩製剤)との比較では,スタッフの手荒れ・湿疹を感じるスタッフの割合は有意に減少した.眼への刺激については,導入後に薬液作製時のゴーグル着用を指導したため,刺激を感じるスタッフの割合は導入前後で変化を認めなかった.薬剤調整時間は30分以内との回答が多く,ゴーグルの着用以外に関しては作業負担に変化は認められなかった.導入後2年間のノロウイルス感染性胃腸炎とClostridioides difficile関連下痢症の院内発生数は減少しており,特に前者については導入後2年間院内発生を認めなかった.これら院内発生数の減少に伴い個人防護具の購入経費は減少したが,亜塩素酸水製剤が高額であるため導入2年後の感染対策経費は年間約22万円のコスト増となった.本製剤の導入に当たっては,効率的な使用計画が医療経済の面で必要である.亜塩素酸水製剤は塩素系薬剤であるが,日常的な病院環境整備剤として有用であると考えられた.
Key words:亜塩素酸水, 環境整備, ノロウイルス, Clostridioides difficile, 安全性
連絡先: e-mail:
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受付日:2018年5月31日 受理日:2018年11月20日
34 (2):106─114,2019
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