─総説─
抗菌薬耐性グラム陰性菌の生き残り戦略と感染症治療薬の開発
石井 良和 東邦大学医学部微生物・感染症学講座
新たな抗菌薬が臨床で応用されると,必ずそれに対する耐性菌が出現してきた.しかし,耐性因子を保有する菌株は,感性菌と比較すると発育速度が遅いなどの生存に不利益な点がある.そのため耐性菌は医療施設などの特殊な環境のみで生存できるとされている.しかし,近年,市中感染の原因となる耐性グラム陰性菌が出現している.本稿では,耐性グラム陰性菌がどのようにして発育速度の不利を克服し,市中に拡散したかについて概説する.さらに,感染症治療薬開発の現状と今後の展望について私見を交えて議論する.
Key words:抗菌薬, 耐性菌, グラム陰性菌, 生残
連絡先: e-mail:
yishii@med.toho-u.ac.jp
受付日:2019年8月1日 受理日:2019年9月18日
34 (6):282─286,2019
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