─報告─
小児専門病院における小児がん患者のバンコマイシン適正投与量の検討
鈴木 英二1), 西條 純1), 小口 真実1), 堀 勝幸1), 村井 健美2), 南 希成2) 1)長野県立こども病院薬剤部, 2)同 感染症科
小児がん患者は,疾病や抗がん剤治療の副作用により感染リスクが高く,バンコマイシン(VCM)はその感染症治療薬として使用される.今回当院小児がん患者のVCM投与量およびトラフ値の変化と抗菌薬Therapeutic drug monitoring(TDM)ガイドラインとの比較を後方視的に検討した.1~6歳の29例では投与量は45.8 mg/kg/dayから61.8 mg/kg/day,投与回数は1日3回から4回にそれぞれ増加し,トラフ値は5.0 μg/mLから10.0 μg/mLへ上昇した.血清クレアチニンは0.21 mg/dLから0.20 mg/dLと変化しなかった.7~12歳の9例では投与量は46.1 mg/kg/dayから60.0 mg/kg/dayへ増加,投与回数は1日4回で変化なく,トラフ値は6.5 μg/mLから10.2 μg/mLへ上昇した.血清クレアチニンは0.24 mg/dLから0.25 mg/dLと変化しなかった.小児がん患者において,1~6歳では61.8 mg/kg/day(15.5 mg/kg,6時間毎),7~12歳では改訂版抗菌薬TDMガイドライン通り60.0 mg/kg/day(15.0 mg/kg,6時間毎)で投与を開始し,TDMを行うことでVCMを10 μg/mL以上の目標トラフ値に到達する可能性が示唆された.
Key words:バンコマイシン, 小児がん, therapeutic drug monitoring(TDM)
連絡先: e-mail:
suzuki-eiji@pref-nagano-hosp.jp
受付日:2020年6月30日 受理日:2020年11月9日
36 (2):111─116,2021
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