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─総説─

災害時に活用可能な迅速検査~災害時など環境・物的資源が限られている状況下で活用できる迅速検査~

青柳 哲史1)2)
1)東北大学大学院医学系研究科内科病態学講座総合感染症学分野, 2)同 医学系研究科感染制御インテリジェンスネットワーク寄付講座


日本は「災害大国」と呼ばれるように,毎年のように地震,津波,集中豪雨,台風など自然災害に見舞われる.災害直後の感染症は,外傷や溺水に関連した創部感染症や肺炎など呼吸器感染症が問題となる.その後,避難所では衛生状態が不十分で,過密状態での生活を長期に余儀なくされることで,インフルエンザウイルス感染症やノロウイルスなどの感染性胃腸炎による感染症およびアウトブレイクが発生する.自然災害後の感染症は,個人の問題であると同時に,集合生活の場における集団感染が問題となる.
問題となる感染症を的確に把握し,感染症診療あるいは感染対策に生かす必要がある.自然災害後のライフラインが不十分で,医療資源が限られている状況で,肺炎球菌尿中抗原検査,レジオネラ尿中抗原検査,インフルエンザウイルス抗原検査,ノロウイルス抗原検査などイムノクロマト法を用いたpoint of care testing(POCT)による感染症診断が,感染診療および避難所でのアウトブレイクの早期探知・介入に有用性であったと報告されている.
今後,感染症領域において遺伝子検査が普及すると考えられるが,現時点で自然災害後のPOCT検査として遺伝子検査を実施することは不可能である.そこで,過去の自然災害後の感染症事例を精査し,想定しうる感染症を念頭にどのような検査方法が確立されているのか,イムノクロマト法などのPOCT検査を中心に平時より検討する必要がある.

Key words:自然災害, 感染症, point-of-care testing, イムノクロマト法

連絡先:
e-mail: tetsujiaoyagi@med.tohoku.ac.jp

受付日:2020年12月7日
受理日:2021年2月17日

36 (3):127─135,2021

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