─原著─
腹腔鏡下結腸切除手術における手術部位感染と予防抗菌薬セフメタゾールナトリウムの投与量及び腎機能との関連性
入口 慎史1), 田中 昌代1), 田沼 道也1), 加藤 敏明1), 針原 康2) 1)NTT東日本関東病院薬剤部, 2)医療法人社団大坪会東和病院外科
手術部位感染(SSI)の発生を抑えるために予防抗菌薬は十分な血中濃度が必要である.近年下部消化管手術において腎機能良好症例ではセフメタゾールナトリウム(CMZ)の血中濃度が低値となるとの報告があるが,SSI発生とCMZの投与量,腎機能の関連性を検討した報告はほとんどない.そこでSSIとCMZの投与量及び腎機能との関連性について後方視的に調査した.腹腔鏡下結腸切除術を施行し予防抗菌薬として,CMZを手術室入室時に1 g(点滴時間1時間),3時間後に1 g追加投与を実施し手術時間が180分以上の症例を対象とした.解析対象症例は98例であり,非SSI群93例,SSI群5例であった.eGFRind(individualized body surface area estimated glomerular filtration rate)が非SSI群66.31 mL/min,SSI群80.95 mL/minと差を認めた(P = 0.01).ROC曲線によりeGFRindのカットオフ値70.68 mL/minが算出された(AUC = 0.841).eGFRind 70.68 mL/min以上の症例ではCMZ1回1 g,術中3時間後の追加投与では投与量不足の可能性があり,投与量の増量や術中追加投与の間隔短縮の検討が必要である.
Key words:手術部位感染, セフメタゾールナトリウム, 結腸切除術, 腹腔鏡, 腎機能
連絡先: e-mail:
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受付日:2021年5月15日 受理日:2021年7月28日
36 (6):299─306,2021
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