─原著─
静岡県立静岡がんセンターにおけるVREアウトブレイク事例の単施設後方視的研究―VRE獲得リスク因子の検討―
赤澤 奈々1), 伊東 直哉2), 寺田 教彦3), 倉井 華子1) 1)静岡県立静岡がんセンター感染症内科, 2)愛知県がんセンター病院感染症内科部, 3)筑波大学附属病院感染症科
背景:Vancomycin-Resistant Enterococci(VRE)は,接触感染による伝播で集団発生をきたすことがある.今回,我々は日本のがんセンターにおけるVREアウトブレイクを経験した.本稿では,がんセンターにおけるVRE伝播の経路およびVRE獲得に関するリスク因子を報告する. 方法:最初のVREが確認された後,病棟全体のVREの便スクリーニング検査と多面的な感染対策を実施した.VRE獲得のリスク因子を特定するために,VRE陽性者とVRE陰性者を比較した症例対照研究を行った. 結果:スクリーニング検査を実施した177人のうち,13人がVRE陽性となった.VRE陽性者は,男9人(69.2%),女4人(30.8%)で,年齢は52~83歳(中央値67.0)で,全員が固形腫瘍患者であった.VRE感染症として治療した症例は1名のみで,VRE感染症による死亡例はいなかった.また,アウトブレイクは,約3ヶ月間と早期に終息した.VRE獲得のリスク因子としては「おむつの使用」がオッズ比11.11(p<0.05)でVRE陽性症例に有意に多かった. 結論:我々の事例において「おむつの使用」はVRE獲得のリスク因子であった.アウトブレイク終息には,手指衛生や個人防護具の使用を中心とした感染対策の徹底と環境清掃が重要である.
Key words:Vancomycin-Resistant Enterococci(VRE), VREアウトブレイク, 固形腫瘍, 感染対策
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受付日:2022年1月11日 受理日:2022年3月31日
37 (4):128─135,2022
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