─総説─
拡大する感染制御の舞台―ヒト医療現場からワンヘルスへ―
萱場 広之 弘前大学医学部大学院医学系研究科臨床検査医学講座
抗菌薬の発見によって一時は克服されるかと思われた感染症は,現在も人類への脅威である.MRSAをはじめとする耐性菌による医療関連感染の抑制には感染制御活動が不可欠である.感染制御の専門スタッフが実働を開始したことにより,2000年代初頭からMRSAの黄色ブドウ球菌に占める割合が年々低下していることも感染制御活動によるものである.しかし,多剤耐性菌の制御は,ヒトの医療に携わるスタッフの対応のみでは十分とは言えないことも事実である.多剤耐性菌は,食品を介したヒトへの伝播が危惧されていることから,国際的視点に立脚した農畜水産分野における抗菌薬の慎重使用が感染対策の一つとして実施されることが望まれる.感染制御の知識と活動は,医療施設内のみではなく,農畜水産分野を含めた学際的・国際的視点に立脚した活動とともに,一般市民の啓発が重要と思われる.
Key words:感染制御, ワンヘルス, 市民啓発
連絡先: e-mail:
kayaba@hirosaki-u.ac.jp
受付日:2017年6月13日 受理日:2017年8月25日
32 (6):317─321,2017
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