─原著─
救急隊員の感染防止対策の実態と消防機関特有の課題
澤田 仁1), 垣根 美幸2), 関根 和弘1), 平出 敦1) 1)京都橘大学健康科学部救急救命学科, 2)洛和会音羽病院
目的:救急隊員の感染防止対策の実態を調査し,消防機関特有の課題を明らかにすることを目的とした. 対象:本研究への協力を依頼し,同意を得られた3市町消防本部の救急隊員30人. 方法:対象の消防本部で研究対象者から直接聞き取りを行うとともに施設内を調査した.加えて,N95マスクの装着手順評価と定量的フィットテストを行った. 結果:救急隊員が着用する個人防護具には,消防機関特有の特徴と取り扱いがあった.施設内のゾーニングは設定されているが,現実には境界が曖昧であった.N95マスクは所持している形状とサイズが限られ,救急隊員が個人の顔にフィットするN95マスクを選択できる環境が十分ではなかった.N95マスクの装着は,ユーザーシールチェックを行っていない救急隊員が20人いた.定量的フィットテストは,総合フィットファクター100以上の合格者が3人であった.定量的フィットテストの合否は,所属との関連が認められた(p<0.05)が,救急救命士資格の有無,装着手順の評価との関連は認められなかった. 結論:救急隊員を感染から防護することは,消防機関の危機管理の重要な任務と言えるが,現在の消防機関には感染防止対策の点で特有の問題や課題がある.救急隊員が現場で安全に任務を遂行するためには,消防機関が抱えるこれらの課題を整理し,感染防止対策に対する組織的な取り組みを継続的にサポートする必要性が示唆された.
Key words:消防, 個人防護具, N95マスク, フィットテスト
連絡先: e-mail:
sawada@tachibana-u.ac.jp
受付日:2022年1月6日 受理日:2022年9月15日
38 (1):7─15,2023
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