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Article in Japanese

─原著─

療養病床における感染症診療の実態に関する点有病率調査結果

森岡 慎一郎1)~3), 鈴木 久美子1), 松永 展明1), 早川 佳代子1)2), 元木 由美4)5), 武久 洋三4)5), 大曲 貴夫1)2)
1)国立国際医療研究センターAMR臨床リファレンスセンター, 2)同 国際感染症センター, 3)東北大学大学院医学系研究科新興・再興感染症学講座, 4)一般社団法人日本慢性期医療協会, 5)医療法人平成博愛会博愛記念病院


療養病床における感染症診療や薬剤耐性菌の現状を把握することは,その課題を明確化し,介入方法を模索するうえで重要である.
療養病床を有する1,032医療機関を対象として,2020年1月から5月に点有病率調査を行った.医療機関の基本情報や患者状況,任意の調査実施日に抗菌薬使用中の患者の治療内容などに関して調査した.
80医療機関より有効回答を得た(回収率7.8%).療養病床における総在院患者6,729人のうち,抗菌薬使用者は9.4%であった.抗菌薬使用者の年齢の中央値は87.0歳,男性が49.5%,その目的は治療が92.4%,予防が7.6%で,主な感染巣は肺炎が36.4%,尿路感染症が24.4%であった.尿培養検査から検出された大腸菌の42%,クレブシエラ属の38%が第3世代セファロスポリン系抗菌薬耐性であった.肺炎患者の29.3%に第3世代セファロスポリン系抗菌薬,14.1%にカルバペネム系抗菌薬,尿路感染症患者の24.1%にフルオロキノロン系,19.5%に第3世代セファロスポリン系抗菌薬,7.5%にカルバペネム系抗菌薬が使用されていた.
療養病床ではESBL産生菌の分離頻度が約4割であり,広域抗菌薬が使用されていた.今後は療養病床における抗菌薬使用量や薬剤耐性菌のモニタリングを継続的に行い,感染症診療に対する介入方法を模索する必要がある.

Key words:療養病床, 感染症診療, 薬剤耐性菌, 抗菌薬使用量

連絡先:
e-mail: shmorioka@hosp.ncgm.go.jp

受付日:2022年2月20日
受理日:2022年10月21日

38 (2):46─56,2023

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