─原著─
AST支援下における電子カルテシステムを利用した抗菌薬使用届出書の記載状況と抗菌薬適正使用のプロセス指標の適切な実行率との関連性の検証
田中 雄大1), 山口 諒1), 山本 武人1)2), 龍野 桂太3)4), 岡本 耕4), 原田 壮平3), 森屋 恭爾3)4), 髙田 龍平1) 1)東京大学医学部附属病院薬剤部, 2)東京大学大学院薬学系研究科医療薬学教育センター, 3)東京大学医学部附属病院感染制御部, 4)同 感染症内科
抗菌薬使用届出書(届出書)への記載状況が抗菌薬適正使用のプロセス指標の適切な実行率(プロセス実行率)に与える影響は十分に検討されていない.本研究は,届出書の正確かつ確実な記載と,抗菌薬適正使用のプロセス実行率との関連性の検証を目的とした. 東京大学医学部附属病院において,2018年1月1日から12月31日に抗MRSA薬あるいはカルバペネム系抗菌薬が投与された入院患者を対象とした.届出書に記載を求めている5項目のプロセス指標(投与量,薬物血中濃度モニタリング予定日(抗MRSA薬のみ),投与予定期間,想定感染部位,局所培養採取の有無(カルバペネム系抗菌薬のみ),血液培養採取の有無)のうち,記載項目数が4項目以上の患者を記載良好群,3項目以下の患者を記載不良群と分類し,各記載項目のプロセス実行率を比較した. 対象患者は抗MRSA薬投与群145例(記載良好群89例,不良群56例)およびカルバペネム系抗菌薬投与群254例(記載良好群178例,不良群76例)であった.いずれの薬剤においても,全てのプロセス実行率に記載良好群と不良群の間で有意差を認めなかった. 感染症診療に対する支援体制が整備された施設では,電子カルテシステムを利用した届出書の記載状況が抗菌薬適正使用のプロセス実行率に与える影響は限定的であり,施設の状況に応じて,記載項目数や記載内容には再考の余地があると考えられた.
Key words:抗菌薬適正使用, 届出制, prospective audit and feedback, 抗MRSA薬, カルバペネム系抗菌薬
連絡先: e-mail:
ttanaka-pha@g.ecc.u-tokyo.ac.jp
受付日:2022年9月29日 受理日:2023年3月22日
38 (4):181─191,2023
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