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─原著─

基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌感染症における経験的治療の有効性評価

詫間 章俊1)~3), 前田 真之4), 川島 渉1)5), 渡辺 裕貴1)5), 中村 久子2)6), 福岡 絵美2), 橋本 裕子1)2), 木村 聡2)3)6), 峯村 純子1)5)
1)昭和大学横浜市北部病院薬局, 2)同 感染管理室, 3)同 臨床病理診断科, 4)昭和大学薬学部臨床薬学講座感染制御薬学部門, 5)同 病院薬剤学講座, 6)昭和大学横浜市北部病院臨床病理検査室


基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(extended-spectrum β-lactamase:ESBL)産生菌はカルバペネム系薬以外にフロモキセフやセフメタゾールにもin vitroでは感性を示すが,実際の治療効果のエビデンスは少ない.今回著者らは昭和大学横浜市北部病院でのESBL産生菌の検出状況を調査し,ESBL産生菌感染症の有効性に関わる因子について検討した.
2008年4月から2016年3月までの間に,ESBL産生菌が起因菌と判断され治療された患者132例のうち,経験的治療として抗菌薬治療が3日以上行われた128例を対象とし,患者個別の背景や治療内容,有効性を評価した.有効群において尿路感染症とカルバペネム系薬の投与が有意に多く,呼吸器感染症が有意に少なかった.多変量解析ではカルバペネム系薬の投与が有効性に関連する因子であった(オッズ比:3.73,95%信頼区間:1.34-10.35,p=0.012).
広域スペクトルをもつカルバペネム系薬は,基礎疾患やフォーカスを選ばず安定した治療効果が期待できる.ESBL産生菌による感染症が疑われる場合には,第一選択薬としてカルバペネム系薬を選択する必要がある.しかし,抗菌薬選択圧の問題を鑑みると,ESBL産生菌の関与が否定された場合や治療の経過が良好な場合には,カルバペネム系薬の投与の中止や他剤への変更を行う必要がある.

Key words:基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ, 抗菌化学療法, カルバペネム系薬, 臨床的有効性

連絡先:
e-mail: a-takuma@cmed.showa-u.ac.jp

受付日:2017年10月20日
受理日:2018年3月27日

33 (4):130─135,2018

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