─報告─
病院大規模再整備に伴うアスペルギルス感染予防対策
岡山 昭彦, 福田 真弓, 佐伯 裕二, 高城 一郎, 平原 康寿 宮崎大学医学部附属病院感染制御部
好中球減少症など肺アスペルギルス症ハイリスク患者の診療を行う医療施設で工事を行う際は,infection control risk assessment(ICRA)により工事の内容と患者への危険度を検討し,これに基づいて対策を行うことが推奨されている.しかし本邦における実際の経験例の報告は少ない.本院では建築約30年後の2006年11月から2013年6月まで,診療を継続し既存施設を利用しながら,大規模再整備を行った.病棟工事が開始された2010年度における臨床検体よりアスペルギルス属菌の分離頻度が増加していることが判明した.検出された患者の臨床的検討からは院内発症例の増加は認められなかったため,検体の汚染によるpseudo-outbreakと判断した.しかし病院と工事全体に及ぶ感染対策強化が必要と考え,ICRA高リスクプロジェクトに準じた対策の強化を行い,その後のアスペルギルス属菌分離頻度の減少がみられた.ハイリスク患者の診療に当たる施設での病院工事においては,計画段階からのICRA,対策立案,事前のサーベイランスを行い,工事中はアスペルギルス検出数などのモニタリング,工事現場の巡回を行い,評価・適切なフィードバックを行うことが有効な対策を行う上で重要であることを再度認識させられた.
Key words:アスペルギルス症, 病院再整備, pseudo-outbreak, infection control risk assessment(ICRA)
連絡先: e-mail:
okayama@med.miyazaki-u.ac.jp
受付日:2017年9月20日 受理日:2018年5月11日
33 (4):161─168,2018
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