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論文名 |
パーキンソン病の認知機能研究最前線~定位脳手術からみた前頭葉─基底核系の認知機能~ |
論文言語 |
J |
著者名 |
丸山 哲弘 |
所属 |
飯田市立病院 |
発行 |
神経心理学:18(3),171─181,2002 |
受付 |
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受理 |
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要旨 |
パーキンソン病は中脳黒質の変性によりドパミン作動性神経が障害され,大脳基底核における線条体機能の低下の結果,主に振戦,筋固縮,寡動・無動といった運動障害を生じる疾患である.しかし,本疾患患者では運動障害の他に認知機能にも異常を生じることが近年認識されるようになった.1980年代から約20年間でパーキンソン病の認知機能について多数の研究が報告されてきたが,ようやくその病態の本質が明らかにされつつある.脳卒中後遺症とは異なり緩徐進行性であるため,病期ごとにそれぞれ認知機能の特徴がみられる.特に注目すべきは,病変が大脳基底核に限局している初期の段階から本疾患に特異的な認知機能障害がみられる.これは注意性セット転換障害と呼ばれ,特に,ある次元から全く別の次元に切り換える場面,すなわち次元外転換で障害が顕著にみられる.最近のパーキンソン病の認知機能研究の動向として,病変のある大脳基底核に直接的操作する定位脳手術に伴う認知機能の変化に関する研究が注目されている.定位脳手術は,破壊術(視床,淡蒼球内節,視床下核)と刺激術(淡蒼内節,視床下核)の大きく2つに分けられるが,どちらの手術についても認知機能への影響に関する知見が集積されている.われわれの信州大学─鹿教湯病院定位脳手術グループによる検討では一側淡蒼球内節破壊術はほとんど認知機能に影響しないが,唯一流暢性機能を悪化させることが明らかとなった.一方,刺激術は欧米において両側刺激術(淡蒼球内節および視床下核)の認知機能への影響がいくつか報告されているが,このような治療方法の発展とともにパーキンソン病における認知機能障害の神経基盤が今後さらに解明されることが期待される. |
Keywords |
パーキンソン病, 認知機能障害, 前頭葉, 大脳基底核, 定位脳手術 |
別刷請求先 |
〒395-8502 長野県飯田市八幡町438 飯田市立病院内科 |
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